フジ住宅株式会社は、大阪府岸和田市に本社を構える東証プライム上場の総合住宅メーカーです。フジ住宅は、従業員である在日韓国人の50代女性に「民族差別的な文書を社内で配布された」として、会社と会長に3300万円の損害賠償などを求める裁判を起こされました。判決は原告側の勝訴が確定しましたが、フジ住宅側の違法性が認められない点も次々と明るみに出ました。
原告側が勝訴も、個人の差別はなかったことが確定
「フジ住宅裁判」が提起されたのは、2015年8月のことです。その後、2020年7月に大阪地裁堺支部、2021年11月には大阪高裁で判決が出されました。
いずれの判決も、フジ住宅側が社員に対して何度も配布した文書の中に、民族差別をあおるような内容が盛り込まれていたとしています。高裁判決では、フジ住宅側は2013年から在日韓国人らを侮辱する内容の文書を従業員に繰り返し配布し、一審判決後も原告を批判する文書を大量に配ったとしました。
一部資料の配布差し止めを命じたとともに、配布を禁止する仮処分も下し、一審で110万円だった賠償額は、二審で132万円に増額されました。
しかし、裁判では、「配布文書は女性個人に対する差別的言動とは言えない」とも認定しています。フジ住宅側に支払いが命じられた賠償額も、原告側が求める3300万円には到底及ばないものでした。
日本人の誇りに触れただけの文書がなぜ?
裁判で認定された通り、フジ住宅の配布文書に含まれていたのは、公の媒体に対する正当な論評と考えられる新聞や雑誌の記事、書籍です。差別的なニュアンスが含まれていたのは、フジ住宅が従業員にYouTube動画を紹介した際、動画の画面と一緒に印刷された社外の第三者による書き込みなどでしかありません。
原告側は人権侵害の証拠として、フジ住宅の従業員が役員に宛てた「日本人でよかったー、うれしい!と心から思いました」といった内容のメールや、「大東亜戦争で日本は負けたという結果からすべてを正しくなかった、間違いだったと否定してしまうことはできないし、否定してはならない」という書籍の一文を単に抜粋したメールなども提出しています。
一方、これらのメールには、特定の他国民を貶めるような表現はおろか、日本以外の国名すら記されていません。ヘイトを連想させる過激な言動が許されないのは当然ですが、日本人としての誇りに触れただけでヘイトになるという理屈には、首をかしげざるを得ないでしょう。
「ヘイトハラスメントを行う企業ではない」と判決
フジ住宅側は、文書を配布した目的について「私企業における従業員の教育・研さんのためであって、差別が目的ではなかった」と主張しています。
高裁の判決理由にも「原告及びその支援団体が、(中略)同社が人種的憎悪・差別を正当化したり助長している、いわゆるヘイトスピーチ、ヘイトハラスメントを行う企業であると主張したり、喧伝したことは、適切な表現とは言い難いというべきである」と明記され、「ヘイトハラスメントを行う企業ではない」と認められています。
さらに、高裁は「同社において、民族差別が行われており、本件活動への参加が強要されているかのような新聞報道がされたのは事実と異なるというべきである」と指摘しました。
「言論の自由をどう考えるのか?」との疑問も
このような状況にも関わらず、多くのメディアは「報道は不適切」という判決内容はおろか、配布の差し止め・禁止の対象になっていない文書が多数存在することも伝えていません。そうした対応が、フジ住宅に対する印象をミスリードしてしまった感は否めないでしょう。
一連の出来事について、フジ住宅が注意すべき点があったとすれば、「原告側にとって不適切な記述やコメントが、そのまま目に入る状態の文書を配布した」ということに尽きるでしょう。文書を配布する前に、民族差別的との誤解を招きかねない部分を隠したり、注釈をつけたりしていれば、特に問題視されることはなかったかもしれません。
高裁判決を受け、フジ住宅側は「判決は過度の言論萎縮を招くもので、到底承服できない」と最高裁に上告しましたが、最高裁は2022年9月に上告棄却・不受理を決定しました。
ただし、これまでの判決に対しては、「私企業の経営者の言論の自由をどう考えるのか?」と疑問を投げ掛ける世間からの声も多く上がっています。
法廷でのブルーリボンバッジ禁止を受けて提訴
民族差別が争点となった「フジ住宅裁判」は、いわゆる「ブルーリボン訴訟」という新たな裁判を生み出しました。
2017年12月、大阪地裁堺支部における「フジ住宅裁判」の第9回口頭弁論に詰め掛けた原告側の支持者たちが身につけていたのは、「ヘイトハラスメントストップ」と書かれたバッジでした。
これに対し、フジ住宅側は2018年3月の第10回口頭弁論で「富士山と太陽」を描いたバッジをつけて入廷しています。ところが、裁判長は「メッセージ性がある」という理由で、双方のバッジを外すよう指示しました。
さらに、裁判長は2018年5月の第11回口頭弁論で、フジ住宅の会長が日常的に着用しているブルーリボンバッジにまで、同様の指示を出したのです。ブルーリボンバッジが、北朝鮮による拉致被害者の救出を願う国民運動のシンボルであることは、多くの国民が知るところでしょう。
北朝鮮人権侵害対処法は、国が拉致問題解決に最大限努力すると定めています。政府の拉致問題対策本部も「ブルーリボン運動」について国民の参加を求めており、歴代の首相をはじめとする主要閣僚もブルーリボンバッジを着用するのが常です。
フジ住宅の会長は「ブルーリボンバッジに政治的な意図などない」と主張しましたが、フジ住宅裁判の法廷内におけるバッジ着用は、一審のみならず、二審でも判決が出るまで禁じられました。
北朝鮮人権法との整合性を問う声
2020年11月、フジ住宅の会長と支援者の計3人は、「法廷内でブルーリボンバッジの着用を禁止し、バッジを外すように指示されたことは、表現の自由を認めた憲法に違反する」として、計390万円の国家賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。
ところが、一審の大阪地裁は3人の請求を棄却しています。さらに、二審の大阪高裁も「違法な公権力の行使とは言えない」として、請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却しました。
これらの判決に対しては、「メッセージが込められた社員章やロゴマークなどは法廷内で禁止されていないのに、なぜブルーリボンバッジは認められないのか?」「国が拉致問題解決に最大限努力すると定めた北朝鮮人権侵害対処法の趣旨との整合性をどう取るのか?」と疑問を呈する向きも少なくありません。
2021年3月の衆院内閣委員会で、政府は「ブルーリボンは拉致被害者の救出を求める国民運動のシンボル」と明確に答弁をしています。一連の判決と政府答弁の間に生じた矛盾は、今なお解消されていないままと言わざるを得ないでしょう。
実際に働いている人たちの評判・口コミは?
さて、「民族差別を受けた」として訴訟を起こされたフジ住宅は、経済産業省による「健康経営優良法人」の「大規模法人部門(ホワイト500)」に選定されています。さらに、原告となった在日韓国人の女性は、現在もフジ住宅に在籍中といいます。
「従業員を差別するような企業が、『健康経営優良法人』として認められるはずはないだろう」と思うのは、一般常識から考えても当然のことと思われます。
では、フジ住宅で実際に働いている人たちは、自分の職場についてどのように評価しているのでしょうか?
社員を大切にしてくれる会社
「風通しが良く、まじめな会社。個人の立場を理解し、適材適所の配属をしてくれる。上司とのコミュニケーションも取りやすい。不平不満があれば、そのまま上司に伝えることができる。体調のこと、家族のことなど社員を大切にしてくれる会社」
引用元:フジ住宅 「社員クチコミ」 就職・転職の採用企業リサーチ OpenWork
資格を取るとお祝い金がある
「宅地建物取引士などの資格を取った際、お祝い金がある。合格後に必要な手続きは勤務時間内に済ませて良く、必要な費用もすべて会社が出してくれる」
引用元:フジ住宅の評判・口コミ|エンゲージ会社の評判
女性にとって働きやすい
「女性にとっては働きやすい職場かと思う。産休を取って復職される方が多く、周囲の皆様も協力されているので、とても頼もしい印象がある」
引用元:フジ住宅の評判・口コミ|エンゲージ会社の評判
健康診断が手厚い
「健康診断の項目が多く、とても手厚いと思う。再検査があった場合も、特に制限されることなく業務中に受けられるところも良い」
引用元:フジ住宅の評判・口コミ|エンゲージ会社の評判
ネット上の口コミ評判サイトでは、フジ住宅に勤める人たちのポジティブな書き込みが多数見受けられます。「まじめな会社」「働きやすい職場」といったフレーズからは、快適な環境のもとで伸び伸びと活躍できる体制が整っていることがうかがえます。
まとめ
フジ住宅は、ヘイトハラスメントを巡る裁判では敗訴しました。しかし、配布した文書は従業員の女性個人を差別するものではなく、新聞報道のあり方にも問題があった事実が認められています。
問題とされた文書についても、フジ住宅側が「私企業における従業員の教育・研さんのためであって、差別が目的ではなかった」と主張したように、自分の存在や役割に誇りを持って働く人材の教育に力を入れていることの証左と捉えることができます。
フジ住宅は「2024年オリコン顧客満足度調査」の建売住宅ビルダー近畿と、建売住宅ビルダー近畿大阪府でそれぞれ第1位をダブル受賞しています。このような快挙を達成できたのは、従業員一人ひとりが自らの仕事を通して地域に貢献している実績が高く評価されているからに他なりません。
働く人たち自身の満足度も高いことは、評判・口コミの内容を見ても明らかです。裁判の結果だけを捉えてネガティブな印象を抱いてしまうのは、間違っていると言えるでしょう。
関西エリアの家づくりを支える上場企業として、従業員の幸せづくりにも大きく貢献しているフジ住宅から、今後も目が離せません。